現在、終末期医療の一端を担っているものがホスピスです。

ホスピスとは、これ以上治療をしても回復は望めず、死を回避できないと判断された場合の終末期医療が行われる施設のことを言い、時として自宅もその範囲に含まれます。

一般的には上記のような状態を終末期と呼びますが、終末期は法や医学による定義がされていません。

そのため、その意味はそれぞれの考え方によるところが大きいのですが、余命3ヶ月以内が一つの基準となることも多いようです。

終末期医療は身体的・精神的苦痛からの解放もしくは軽減を目的としており、人間らしく、自分らしく生きるための応援をしようというのが、その基本的な考え方になります。

ガンが様々なケアを発展させた?

日本の終末期医療は、ガンの治療とともに発展したといっても過言ではありません。

治療方法が進歩し、今ではガンも治る病気として認識されるようになってきましたが、一昔前までは、ガン宣告は死の宣告と同じように考えられていました。

ガンは人間に多くの苦しみを与える病気であり、その苦しみをできるだけ取り除き、死を迎えるまでの期間を支えるために様々なケアが発展してきたのです。

緩和ケア

病気そのものから来る苦痛や、治療が原因で起こる苦痛を和らげることを目的としたケアです。

終末期医療と混同されがちですが、年齢や病気のレベルに関係なく初期から終末期までに渡って行われます。

治療に関わる全ての医師や看護師が携わるものを基本的緩和ケアと言い、基本的緩和ケアでは対処しきれない場合に、緩和ケアの専門家によって行われるものを専門的緩和ケアと言います。

サポーティブケア

治療によって引き起こされる苦痛を和らげるために行われます。

特にガン治療では、抗ガン剤の副作用や放射線治療の苦しみ、切除による苦しみなどをケアし、治療効果を上げるためにも行われるケアです。

終末期医療に至らないための、治癒に向けたケアでもあります。

終末期ケア

苦しみを和らげながら、穏やかに死を迎えるために行われるケアであり、患者の身体的・精神的な苦痛を和らげます。

回復が望めない場合に行われるケアのため、治療行為は含まれません。

ホスピス病棟で行われることが多く、緩和ケアの専門家が勤務することも多いため、ホスピスケアと専門的緩和ケアが同一視されることが多いようです。
死に対する恐怖感を和らげるメンタルケアも含まれ、時には宗教家によるケアが行われることもあります。

また、最後は自宅で過ごしたいといった希望があれば、在宅でのケアが行われる場合もあります。

ホスピスの具体的な内容

在宅介護
近年になり、ガンの治療現場では回復が期待できない場合に、転院や退院を勧められることが多くなりました。

しかし転院といっても、ホスピスはそもそもの数が多くないために満床状態であることが多く、「最期は在宅で」という政府の政策もあり、終末期を自宅で送るケースも増えています。

入院できるとも限らないというのが現状ではありますが、ホスピスでは実際にどのようなケアが行われているのかご紹介していきます。

ホスピスでは延命はしない

ホスピスは治療方法がなくなってしまった人が、人間らしいプライドや喜びなどをもって死を迎えられるようにケアをする場所です。

ホスピスで行われるケアはホスピスごとに違いますが、基本的にはいわゆる延命措置をせず、自然に人生を終えられるようにします。

  • 食事が摂れなくなっても点滴や胃ろうなど経口以外の食事摂取はしません。
  • 呼吸困難に陥っても人工呼吸器を使用しません。
  • 心臓が止まっても心臓マッサージをしません。
  • ガンが転移しても手術や抗ガン剤治療、放射線治療をしません。

嗜好品も認められる?

先程人間らしく、自分らしくと言いましたが、具体的には以下のようなケアによって支援されます。

  • 鎮痛、睡眠など心を落ち着け、苦しみを和らげるケアが行われます。
  • 民間療法、漢方なども患者に大きな害を与えない範囲で認められています。
  • お酒やたばこなどの嗜好品も、程度を定めて認められています。
  • 死への恐怖心が強い場合、宗教者による心のケアが行われます。
  • 家族の問題やお金の問題にも定められた範囲内で対応します。

ホスピスにも保険は適用される

ホスピスの費用は一般病棟と変わらず、また保険も適用されるため、自己負担は1割〜3割となります。

ホスピスの費用の概算
診療費 入院期間30日以内:49,260円
入院期間31日以上:44,000円
入院期間61日以上:33,000円
食事代 1食100~360円(所得による)
差額ベッド料 5000~15,000円程度
その他 おむつ代、テレビ使用料など

ホスピスへの入院が困難な時は在宅緩和ケアを

在宅緩和ケア
ホスピスが近くになかったり、本人が希望したりすれば在宅緩和ケアを受けることができます。

近年の政府の方針は在宅緩和ケアを目指しており、在宅緩和ケアでは介護認定を受けて介護保険を使うこともできます。

一般病院で終末期患者を受け入れる?

終末期を迎えて瀕死の状態にありながら、受け入れ先のない患者さんもいます。
一般病院の中には、こういった患者さんを受け入れてくれるところもあります。

しかし、このような病院では専門的な緩和ケアが受けられない場合も多く、また診療科が違うこともあります。

しかし、ホスピスが不足している現在は、こういった病院が地域の終末期医療を支えているというのが実態なのです。

セデーションという選択

セデーションは日本語では終末期鎮静などと言われるもので、薬物によって患者の意識レベルを強制的に低下させることで苦痛を取り除くことを言います。

終末期医療におけるセデーションは、基本的には一度始めたら患者は目覚めることなく、眠ったまま死を迎えることになります。

セデーションは死期を早めているのではないかという声もあり、また安楽死という考え方にも関わってくるため、時には問題視されることもあります。

セデーションを始めると、患者はコミュニケ―ションを取ることができなくなるため、セデーションを始めることで実質的な死を迎えるという考え方もあるようです。

また、セデーションを行うには細かい条件が定められています。

  • 患者の死期が数時間~数日であることがはっきりしている。
  • 患者の身体的苦痛が耐えがたい程激しいものである。
  • あらゆる緩和処置をとったがセデーション以外に患者の苦痛を和らげる方法がない。
  • 患者が希望している。

セデーションは、これらの条件を全て満たした時に初めて行われます。
家族との話し合いが不十分なままにセデーションを行うと、残された家族が罪の意識を抱えて苦しむこともありますので、セデーションを行うかどうかはよく話し合っておかなければなりません。

セデーションに限らず、終末期医療はとても難しい問題と言えますから、万が一に備えてご家族としっかり話し合っておくことが重要なのです。

──────────────────────────────────
介護リフォームマガジン
https://www.kaigo-reform.com
──────────────────────────────────

運営会社 株式会社オールシステム

Facebook https://www.facebook.com/allsystem.web
Twitter  https://twitter.com/alls_mag

〒460-0003
愛知県名古屋市中区錦1-17-13 名興ビルディング7F
TEL 052-220-5250 / FAX 052-220-5285
URL https://www.allsystem.jp/