高齢者の万引きが急増!被害額全体の3割を占める
近年、万引きに手を染める高齢者が増えています。
2015年度の万引きの被害額は、1兆407億円。東欧の小国であるマケドニアのGDP(国内総生産)が約1兆円と考えると、これは驚くべき数字です。
しかも、高齢者による万引きが被害額全体の3割を占めています。この数字は警察に検挙された数なので、現実にはもっと多いはずです。
その理由としては、まず総人口に対する高齢者の占める割合が急増していることがあげられます。また、高齢者の経済的貧困、社会的孤独、認知症患者の増加などがその要因となっています。
万引きをする高齢者の特徴
元気な高齢者の増加
医療の進歩や栄養状態の変化により、元気な高齢者が増えています。実際に万引きをするには、自宅にこもっていてはできません。外出して、店舗に行き、ある程度頭を使う必要があります。つまり、元気な高齢者の増加が犯罪を増やしている一面もあるのです。
男性より女性の万引きが多い理由
65歳以上の高齢者のうち、万引きで検挙された男女の比率を見ると、圧倒的に女性が高くなります。女性の検挙者数は、男性の約4倍になります。
男性は生活の困窮から万引きをするケースが多く、女性は精神的なストレスが理由である場合が多いです。これは男女の平均寿命の差も一因と言われています。
2015年の男女の平均寿命は、男性が80.79歳、女性が87.05歳でした。女性の方が男性より約6〜7年ほど寿命が長いのです。つまり、配偶者との死別が女性高齢者を孤独に追い込んでいるというわけです。また、夫の介護疲れなどによるストレスも関係しているでしょう。
認知症の増加
認知症は脳の病気です。ピック病、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。この中で、万引きなどの反社会的行動を取りやすい認知症はピック病です。
ピック病とは、大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮する病気です。そのため、前頭側頭葉変性症ともいいます。若年性認知症であり、主に40代から50代にかけて発症します。社会的に地位のある男性が、万引きをして逮捕されたことをきっかけに、ピック病が見つかることもあります。
病識がないので、罪悪感もなく反省することはありません。明らかに罪を犯していても、注意されると激高し、暴力を振るうこともあります。認知症であることを本人が認めないため、単なる窃盗犯として扱われると、本人のみならず家族にまで影響がおよびます。
非対面式店舗の増加
昔のような個人商店が減って、大型のスーパーなどが増えたことも要因でしょう。店員の対応が事務的になり、高齢者が社会とのつながりを感じにくくなったと言えます。
自ら刑務所に入りたがる高齢者
極端な経済的貧困のため、住居すらない高齢者が少数ながら存在します。彼らの中には自ら刑務所行きを志願する人もいます。以前は、年末年始に多かったのですが、今は1年を通じて待機している状態です。
アメリカの作家、オー・ヘンリーの短編小説に『警官と賛美歌』という作品があります。働く気のないホームレスが、衣食住を得るため刑務所に憧れる話です。軽犯罪を繰り返すのですが、逮捕されません。今の日本では、これと同じことが現実に起き始めているのです。
年金をかけていなかった。貯金がない。そして、住む場所もない。そんな貧困高齢者にとって、刑務所は安心できる場所なのでしょう。食事には困らない。医療は受けられる。なにより、刑務所内は孤独ではありません。刑務所仲間がいるし、顔見知りの看守さんもいます。
そこまで貧困ではなくとも、退職後に地域社会とつながりを持てずに、孤独化する高齢者も増えています。
社会との関わりがなくなると、万引きをする人が増える傾向が見られます。失うものがないと投げやりになりやすいのでしょう。ひとり暮らしでも、近所づきあいを持てている人や、家族との関わりがある人は、万引きを起こすことは少ないのです。
万引きをする高齢者への対処法
万引きする高齢者に対しては、その原因を個別に見極めることが大切です。
貧困やストレスによるもの、精神疾患によるもの、認知症によるもの。
この3種類のどれにあてはまるかをチェックし、対処法を考える必要があります。
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- 貧困やストレスが原因
貧困には、社会福祉的な救済措置を検討し、生活保護など福祉からの援助を行うとよいでしょう。
孤独のストレスを緩和するためには、カウンセリングも効果的です。話を聞くだけでも落ち着くことがあります。
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- 精神疾患が原因
医学的な処置をすることで、改善が見られます。
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- 認知症が原因
認知症専門の医師からの援助が必要です。
万引きされる側(店舗など)の対応策
既に万引きによって倒産に追い込まれた小売業者も存在します、
そのようなことにならないよう、店舗でもそれぞれに対策をこうじています。ただ商品を取られないためだけでなく、なぜ高齢者が万引きを犯すのかを店舗側も理解するところから始めるべきでしょう。
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- 万引きしにくい店舗を作る
万引き被害のあったコーナーや店内の死角になりやすい場所に、従業員を配置すること。全体にバランスの取れたスタッフ配置が大切です。
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- 高齢者が来店したときには声をかける
従業員は、来店した高齢者の顔を見て声をかける習慣をつけることです。万引きをする自覚のある高齢者であれば、顔を確認されることで万引きしにくくなります。
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- 格好や行動が挙動不審な人に注意する
不必要に大きなバッグを持っている人や、不自然なコートを着た人には注意が必要です。
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- 認知症に対する知識をつける
これには従業員への教育が必要です。認知症を患う高齢者の特徴はよく覚えておくことです。若い従業員にとっても老後のことを真剣に考えるいい機会になります。
高齢者が参加しやすい社会の構築が万引き防止につながる
日本人は仕事を生きがいにする傾向が強いため、退職したときの喪失感が大きいと言われています。特に自分の仕事に情熱をもって働いてきた人は、退職日をさかいに社会との関係が激減します。
そういう意味では、退職は強制的な失業と言い換えてもよいでしょう。
これから迎えることになる超高齢化社会に向けて、高齢者が働ける社会構造、地域に貢献できる役割などについて考えていくことが大切だと言えます。そうした社会の構築が、高齢者の万引き防止にもつながっていくのです。
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