高齢者が早起きなのはよく知られていますが、それは必ずしも加齢によるものとは限りません。
睡眠障害が原因の場合もあるのです。
睡眠障害には様々なケースがあり、症状次第では医療的な処置が必要となってきます。
とはいえ、高齢者自身が睡眠中に自分の症状を自覚することはできません。そのため、同居している家族などが、高齢者の睡眠の特徴を知り、冷静に対処することで睡眠障害を和らげてあげることが大切になります。
高齢者に見られる睡眠の特徴
早起きになる
加齢による体内時計の変化が原因になります。血圧や体温、ホルモンの分泌などの、睡眠を支える生体機能リズムが崩れることで、体内時計が前にずれるのです。
その結果、朝早く目が覚めることになります。早く寝たから早起きしたというわけではありません。
早起きは加齢によるものなので、病気ではなく自然な高齢者の状態です。日中に眠くならなければ特に問題はありません。
寝付きが悪くなる
寝付きが悪くなるのは、メラトニンの減少と関係があります。
メラトニンとは、脳内で合成されるホルモンの一種です。脳の松果体と呼ばれる部位で作られます。
メラトニンには主に2種類の作用があります。
- 入眠作用(眠りに導く作用)
- 体内時計を調整する作用
高齢者になると、このメラトニンの分泌量が減るため、寝付きが悪くなるのです。
睡眠が浅くなる
心配なのは、睡眠が浅くなることです。
いったん眠りについても3時間程度すぎれば、目が覚めてしまう。朝が来るまでに何度も眠っては、また目が覚めることを繰り返すケースがあります。
これを「中途覚醒」と言います。この状態が続くと、睡眠の質が下がり、昼間にウトウトすることになります。それが原因で、思わぬ事故につながることもあるのです。
レム睡眠とノンレム睡眠〜高齢者の浅いノンレム睡眠には注意
睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類に分けられます。
レム睡眠は、身体は眠っているが、脳が起きている状態です。
具体的には、眼球がきょろきょろ動く、身体の力が完全に抜けている、呼吸や脈拍が不規則、そしてよく夢を見るなどの特徴があります。
レム睡眠には、眠っている間に脳が活動することで、記憶を整理する役割があります。
ノンレム睡眠は、脳が眠っていて身体は起きている状態です。
浅いノンレム睡眠から深いノンレム睡眠へ、1から4段階に分けられます。
居眠りはほとんどがノンレム睡眠です。疲れている時に短時間居眠りするだけで非常にスッキリすることがありますが、それはノンレム睡眠のおかげです。
入眠直後、身体の筋肉は働いています。そして、眠りが深くなるにしたがって、呼吸回数・脈拍が少なくなります。夢をほとんど見ることはありません。
高齢者の睡眠で要注意なのは、深いノンレム睡眠が減り、浅いノンレム睡眠が増えることです。
脳を休ませるノンレム睡眠の浅い段階が増えると、精神的な病気につながりやすいと言われています。
ここからは、睡眠障害のさまざまなパターンをご紹介していきます。
睡眠障害のタイプ3種類
- 入眠障害:布団に入ってもすぐに眠れず、寝ようと焦るとさらに目が覚めてしまう状態です。精神的な苦痛を伴います。
- 中途覚醒:眠っている途中で目が覚めてしまいます。それが何度も繰り返されると精神的に疲れが残ります。
- 早朝覚醒:朝早く目が覚めてしまい、それ以後は眠りにつけず、深い眠りを得ることができません。
高齢者の睡眠障害の原因
- 心理的ストレス:退職後の喪失感、配偶者との死別、独り暮らしによる不安など。
- 身体の不調:心臓疾患、前立腺肥大による頻尿、老人性の乾燥皮膚炎によるかゆみ、関節痛、筋肉痛により睡眠障害が生じます。
睡眠障害の代表的な症例
睡眠時無呼吸症候群
主に肥満の人に表れる症状で、上を向いて眠っているときに、舌の付け根が気道をふさぐことで、呼吸が止まってしまう病気です。大きなイビキをかくことがあります。脳に酸素が行かず酸欠状態になり、快適な睡眠をとることができません。
周期性四肢運動障害
眠っているとき、主に下肢が周期的にピクッと動くことが特徴です。下肢の不随意運動によって質の良い眠りが取れなくなり、日中に眠気を感じる、日常生活における仕事能力が低下する、などの影響を及ぼすことが考えられます。
レストレスレッグス症候群
むずむず脚症候群ともいいます。主に下肢に不快な症状を感じる病気です。寝ようとしたときや、電車や飛行機、映画館などでじっと座っている時に、脚の内側から不快感が起こり、脚を動かすと和らぐといった特徴があります。
精神疾患による睡眠障害
- うつ病により眠れない。夜間眠れず、日中にぼんやりしてしまう。
- 孤独のため、アルコール依存症になり、飲酒しなければ眠れなくなる。
- レム睡眠行動障害:睡眠中に大声で叫んだり、暴れたりするなどの行動をとります。身体は休んでいながら脳が活動する、レム睡眠時に起こる異常行動です。この行動が自分や周りの人を傷つけてしまうことがあります。
認知症による睡眠障害
夜間徘徊
日中に眠り、夜になるとはっきり覚醒するために、昼夜が逆転します。そして、夜の徘徊を始めます。介護者が夜間の眠りを阻害されるため、本人だけでなく、家族も精神的に疲弊します。
夜間せん妄
せん妄とは、意識障害が起こることによって、頭が混乱することです。
脳の機能が低下し、神経の伝達がスムーズにできていません。
幻覚を見たり、落ち着きがなくなり、興奮状態に陥って大声を出したり、暴力を振るうこともあります。夜になるとせん妄が出るものを、夜間せん妄といいます。
睡眠導入剤、鎮静剤の使用についての注意点
無理に寝かしつけようとして、睡眠導入剤や鎮静剤などを使用しすぎると、誤嚥(ごえん)を起こしたり、ベッドから落ちて骨折するなど、更に介護負担が増える可能性があります。必ず医師の専門的な判断をあおぐようにしましょう。
高齢者の睡眠障害への対処法
- 起床時間、就寝時間を決める。
- 昼間は日光を浴び、夜は照明を強くしない。
- 規則正しい3度の食事をとる。
- 身体や精神の病気の場合は、医師の治療を受ける。大きなイビキをかく、下肢がぴくつく、むずむずするなどの症状があれば、医師の診断を受けましょう。
- カフェイン、アルコールの摂取を避ける。就寝の4時間前には、カフェインの摂取を避けましょう。アルコールに関してはできる限り控えましょう。
高齢者の早起きは「年寄りだから仕方ない」と根拠なく判断してしまうと、大きな病気を見逃し、重症化するケースがよくあります。
家族が介護する際には、睡眠障害の症状をチェックして医師や看護師と相談することが不可欠です。
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