空き家や空き室が増えているのに、入居できない理由
「人口が減って、空き家や空き室の数が増加している」
「入居したくてもできなくて困っている」
この2つはまるで正反対と言えませんか?
入居したいのならば余りに余っている空き家や空き室に入居すれば良いのでは?と思われるのではないでしょうか。
全国では約820万戸の空き家や空き室が存在しています(平成28年7月現在)。そのうち、賃貸用が半数以上と言われています。しかしその一方で、家賃が控えめとされる公営住宅の入居倍率は全国で5.8倍、東京都では22.8倍(平成26年度)もあったそうです。
そして、これは以前から問題にされることがあったと思いますが、高齢や障がいを理由に家主から敬遠される等、住居の確保が難しいケースも多々存在しています。
ますます加速している社会の高齢化に伴い、問題は更に深刻化していると言っていいでしょう。では、その問題に対して、国はどのような方針を持っているのでしょうか?
2020年までに17万5千戸を目標に〜住宅セーフティネット法
単身の高齢者や低所得者など住宅確保において特に配慮が必要な人(要配慮者)に対して、空き家や空き室を専用の賃貸住宅として登録して入居を促進させる制度が創設されました。それが、住宅セーフティネット法(2007年7月施行)です。
そして、2017年2月には改正案が閣議決定、年内には国会で成立される見込みとなっています。
「家賃補助」「滞納防止の代理納付」「支援法人の新設」など〜改正法案
改正法案では、主に次のようなことが追加される見込みです。
- 空き家の持ち主が要配慮者に対して入居を拒まない賃貸住宅の登録制度を創設。都道府県などに届け出る。その情報はデータベースとして広く周知されること。
- 高齢者などが暮らしやすいように、耐震改修やバリアフリー化することを想定した住宅改修の費用を、住宅金融支援機構から融資を受けられるようにすること。
- 要配慮者を限定対象として、最大4万円の家賃補助、最大6万円までの家賃債務保証料の補助が受けられること。
- 居住支援法人を新設。要配慮者の相談窓口となり、相談に応じて登録住宅の情報提供や、入居後のフォローなどを行うもので、都道府県から指定を受けた法人。社会福祉法人や不動産会社などが該当し、要配慮者の円滑な入居を支援する活動を公正かつ適確に行える法人とすること。
- 家賃債務保証事業については住宅金融支援機構が家賃保証保険を担う計画となっていること。(居住支援法人の家賃滞納の保障負担が大きくなるのを防ぐため)
- 生活保護受給者に対しては、住宅補助費が直接貸主に支給される代理納付が拡大されること。今まで住宅補助費の使い込みなどで家賃滞納といったケースが少なくなかったため、今後はそのような実態がある場合には、家主から代理納付の変更を福祉事務所に願い出ることができる。福祉事務所が確認し、必要と判断すれば、代理納付が認められる。
この改正案をもとに、国は2020年度までに17万5千戸の登録を目指しているそうです。
※この住宅セーフティネット法においての「要配慮者」には、高齢者、障がい者の他に、低額所得者、子育て世代、被災者も含まれています。様々な理由で住宅の確保が困難であり、特に配慮を要する者とされています。
地方自治体ごとに活動する支援体制も
地方自治体では、平成26年度より「低所得高齢者など住まい・生活支援モデル事業」というものを実施しています。これは、自治体が国(厚生労働省)からの指示でそれぞれ独自の活動を行っているものです。平成27年度では、12の自治体が活動していました。
事業内容の主なものとしては、自立した生活をおくることが困難である低所得・低資産の高齢者を対象として、空き家などを活用した住まいの支援や見守りなどの生活支援です。自治体ごとに名称は異なるようですが、ここで実例をいくつかご紹介しましょう。
東京都の場合〜「地域居住支援モデル事業」
平成29年度では、補助事業者は4社。昨年度に比べて1社追加されたそうです。社会福祉法人や特定非営利活動法人が登録されています。都からは800万円の範囲内で補助を受けて活動しています。
日常の自立生活に不安がある低所得高齢者や、低所得の障がい者などに対し、住居の確保に関する支援や、見守りなどの生活支援をトータル的に提供するというのが活動目的となっています。
具体的な事業内容は次のとおりです。(平成28年度の場合)
- 要支援者のニーズに合わせて、賃貸アパートの空室を確保する。
- 各アパートに自動消火装置や安否確認システムなどを設置し、事故などの防止に努める。
- 賃貸アパートの空室を活用した、互助ハウスの設立。地域交流の拠点とする。
- 生活指導などを含んだ戸別訪問の実施。
- 医療機関などとの連携で急病・怪我などに対する体制を整える。
- 高齢者向けの催しや、地域住民(特に子どもたち)との交流会を設け、戸建ての空き室などを共同のリビングとして、交流・相談室として活用する。
このように、入居者に対し健康の維持増進を図ったり、地域コミュニティ活動などへの参加を促し、住民同士の互助の仕組みを作り上げるなど、幅広い世代間交流の促進を行っています。
福岡市の場合〜「住まいサポートふくおか」
福岡市内の民間賃貸住宅へ住み替え希望者で、65歳以上の人がサポート対象となります。協力不動産事業者や生活支援を担う支援団体と連携して、物件情報の提供や入居時や入居後に必要なサービスのコーディネートを行うのが主な事業内容です。実際の活用事例を1つご紹介しましょう。
75歳の男性Fさんのケース
アパートの2階での一人暮らしで、軽度の認知症を患っているFさん。親族とは付き合いがありません。収入は年金が月に13万円程度ですが、社会保険料などで債務が15万円程度あります。
足腰が弱ってきて、階段の上り下りに苦労するようになりました。1階の物件に住み替えをしたいが、住み慣れた地域で暮らし続けたいという希望がありました。
そこでコーディネートされた支援団体のサービスは次のとおりです。
- 「見守り」定期的に安否確認することで孤独死を防ぐ
- 「権利擁護」計画的な金銭の管理を行う
- 「死後の事務委任」死亡した際の葬儀・納骨・家財処分などを行う
これら3つのサービスを利用することで、Fさんは家主さんの安心感を得ることができ、希望した物件に住み替えることができたそうです。
緊急時対応で協力員などによる駆けつけや、弁護士・行政書士などによる各種相談から、死亡後の永代供養や共同墓地への納骨、買い物や外出の支援など様々なサービスを、利用者のニーズに合わせてコーディネートしてくれるというのは、単身で親戚づきあいなどもない高齢者にとっては、特に助かるサービスであると言えるでしょう。
超高齢社会へと突入した日本。国・自治体・民間が協力してサポートしていく制度が今後ますます充実していくことが期待されます。
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