「バイステックの7原則」とはケースワークの原則となる倫理観
ケースワークを必要とする個人や家族にとって、ケースワーカーがどのような対応をし、どのように援助してくれるのかは気になるところでしょう。
ケースワーカーはクライアントの話をただ聞いていればよいわけではありません。
「バイステックの7原則」に基づき、クライアントにとってベストな解決策を見出していきます。
「バイステックの7原則」とは、ケースワークの実践における原則とされている倫理観です。
ケースワーカーがクライアントに対して「行ってはいけないこと」や「こうするべき」といったことを定義しています。
アメリカのケースワーカーであるフェリックス・P・バイステックによって提唱されました。
個別化の原則
クライアントを個別化する=個人として捉えるべきという考え方です。ケースワークを必要とする理由は人によって様々でしょう。また、年齢も違えば育った環境も違い、それぞれ異なった価値観を持っていて当たり前です。
ですから、「過去に似たような問題があったとしても、ケースワーカーはそれを「イコール」とみなしてはいけないのです。
個別化の原則において、クライアントを「ラべリング」することは禁止とされています。
ラべリングとは、言い換えれば「レッテルを貼る」ことで、例えば「認知症の高齢者だからこう」「障がいのある子どもだからこう」などとケースワーカー自身の価値観でクライアントの人格や環境、ニーズを決めつけてしまうことをいいます。
ケースワーカーはクライアントに対して一方的に解決策を押し付けるのではなく、個人のバックボーンを把握しながら話を進めていかなければならないのです。
意図的な感情表現の原則
クライアントは人間ですから、もちろんプラスの感情(喜び、楽しさ、うれしさなど)もマイナスの感情(怒り、悲しみ、不安など)も持ち合わせています。
意図的な感情表現の原則は、そういった感情すべてを自由に表現できるよう、クライアントの感情表現を認め、また、意図的に表出させることに重点を置いた考え方です。
特に、他人であるケースワーカーに対して、なかなか出しにくいマイナスの感情を表に出させることが重要とされています。たとえ、クライアントが怒りにまかせて話そうとも、泣き声をあげながら話そうとも頭ごなしに否定してはいけません。
むしろ、そういう時こそ、クライアントの内面を冷静に見つめてあげる必要があるのです。人間はプラスの感情を表現している時よりも、マイナスの感情を表現している時の方が本音を出しやすい傾向があると言われています。ですから、あえてマイナスの感情を引き出すといった手法も有効なのです。
統制された情緒関与の原則
ケースワーカーはクライアントの感情を受け止めつつも、それに飲み込まれてはならないという考え方です。
例えばクライアントが涙を流していたとしても、一緒になって悲しんでいては話が進んでいきません。また、ケースワーカーも人間ですから、マイナスの感情に飲み込まれてしまうと、冷静な判断ができなくなってしまうでしょう。
統制された情緒関与の原則においてケースワーカーに必要とされるのは、クライアントの感情を正確に理解すること、そして自分の感情をしっかりと制御することの二つだといえます。
受容の原則
言葉の通り「クライアントを受け入れること」なのですが、この「受容」の意味を誤って認識してはいけません。
バイステックの7原則の提唱者であるフェリックス・P・バイステックが述べているのは、クライアントの「悪」の部分を許容するという意味ではありません。道徳に背いた行為を認めるということではなく、クライアントがどのような考え方の元でそのような行為を行ったのかを理解することを意味しています。
もちろん、クライアントはあるがままの自分を受け入れてほしいと思っています。ですから、たとえケースワーカーから見て尊敬できない部分があっても、それを「現実」として受け止めるべきなのです。
非審判的態度の原則
言葉の通り、ケースワーカーはクライアントに対し裁判的な態度になってはいけないという考え方です。
クライアントの抱えている困難やクライアント自身の価値観を、ケースワーカーの価値観や一般的な基準と照らし合わせたり、善悪の評価を下したりしてはいけません。
クライアントは相談の時点で否定されることを恐れているといえるでしょう。その恐怖心が現実のものとなれば、ケースワーカーへの信頼度を下げてしまうことは否めません。ケースワーカーはあくまでも解決に導くための存在です。善悪の評価を決めるのはクライアント自身なのです。
自己決定の原則
クライアントの行動を決定するのは、あくまでもクライアント自身だという考え方。その実現のために必要となる情報の提供、決定後に生じるメリットやデメリットなどの照会、援助プランの提案を行っていくのが本来のケースワーカーのあり方だといえます。
クライアントに決定権を与えることは、本人を尊重することにも繋がっていくため、バイステックの7原則においては、はずすことのできない考え方と言えます。
そもそも、すべての人はその人自身の人生を決める権利を持っています。家族を含め他人に決定権があるわけではありません。ケースワーカーはそれを忘れてはならないということです。
秘密保持の原則
相談を受けるにあたって知り得た、クライアントの個人情報やプライバシーは絶対に守らなければならないという考え方です。
秘密保持の原則は、ケースワークの世界に限らず、守られるべきものだと言えます。例えば雇用主が社員、またはアルバイトの個人情報を外部に漏らしてはいけませんし、本人の許可なく行われた場合であれば法律に触れる行為でもあります。
秘密保持の原則が守られていない状況では、互いの信頼関係を築くことなどできません。まして、本来であれば他人に話さないような生活上の問題を第三者に漏らすようなことをすれば、人権侵害にも繋がりかねません。
ケースワーカーはケースワークのプロとして、一人の良識ある人間として、守秘義務は絶対に守ることを課せられます。
「バイステックの7原則」のご説明をさせていただきましたが、ケースワーカーの立場やあり方はお分かりいただけたでしょうか?
クライアントがケースワーカーに求めているものは安心感と同調です。個人の抱えている問題を解決するためには、相手の感情を受け入れる態度がなにより大切だとえいます。
もっといえば、ケースワーカーは話すペースや言葉の使い方までクライアントによって変えていくことが求められます。もちろん、それ以前に話しやすい雰囲気であること、クライアントがリラックスできていることが大切です。
また、バイステックの7原則は一件すべてが独立した考え方のようですが、実はすべてが密接に関係しているのです。
7つの考え方のうちどれか一つでも欠けてしまえば、バイステックの7原則は成り立たないといっても過言ではありません。
ケースワークの担い手であるケースワーカーは、バイステックの7原則を常に頭に置くことが大切なのです。
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