介護した家族に多く相続させたい!多く相続したい!なら遺言を

「介護してくれている家族に家を残すと約束している」
漠然とではあるけれど「介護をしてくれている家族に多く相続してもらいたい」
と思っている場合には、口約束ではなく、必ず遺言書を作成しておきましょう。

ご家族を介護するために仕事を辞めたり、自分の時間を犠牲にしたりして、介護が終わった後の生活に不安を感じる場合もあるでしょう。
その場合には、家に住み続けられるように遺言を書いてもらうなど、早めにご家族に相談しましょう。

遺言がないと、いくら身を粉にして介護し、その後の生活に困ったとしても、自動的に相続分が増えることはありません。
元々家族間では扶養義務があり、「家族の世話をするのは当たり前」という認識が一般的にあるためです。

介護していない相続人との間でトラブルになる可能性も

必要と分かっていても、

  • まだ先のことと思っていた
  • 死を予感させるようで言い出せなかった
  • 実際の作り方がよく分からない

などの理由で遺言の作成に至らないことも多いかと思われます。
その場合には相続人の間で協議をすることになります。
しかし、もし「介護をしたので多くもらいたい」と主張しても、介護の大変さは介護をしなかった家族には伝わりにくく、すんなりと受け入れられない可能性もあります。

例えば、父親が他界し母親も既に他界していて兄と妹の2人兄弟の場合、遺言がなければ兄と妹で1/2ずつの相続となりますよね?
しかし、父親と同居して何年も介護した兄家族は家を相続してそのまま住み続けられると思っているし、父親もそう望んでいたとします。
でも、妹家族は自分の相続分が減るとは思っていないばかりか、同居していて家賃を払っていなかったからその分兄が得をしていたかもしれないし、自分の子供達よりも兄の子供達の方が何かと両親から優遇されていた、などと感じている可能性もあります。

相続する主な資産が土地と建物などの不動産のみだった場合には、兄は家に住み続ける権利を主張するでしょうし、妹は家を売却して半分は自分が貰いたい!となり、トラブルに発展するのです。

民法の「寄与分」で介護した人が多く相続することは難しい

悩む女性

「寄与分」とは

民法には「寄与分」の権利を認める次のような条項があります。

「共同相続人となる者の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の貢献(寄与)をした者がいる場合、その寄与をした相続人は、遺産分割の際に法定相続分により取得する額を超える額の遺産を取得する権利がある」民法第904条の2第1項

被相続人財産の維持または増加に貢献していないといけないので、そもそも被相続人に相当な収入がないとだめなのです。

「寄与分」が認められるケース

被相続人財産の維持または増加に貢献していればいいので、収入のある被相続人が収入を得る、または収入を維持するための手助けをした場合には「寄与分」が認められます。
被相続人が1人では仕事を続けられないけれど、送迎や見守りをしたことによって仕事を続けられ、収入が維持できた場合などが該当します。

実際の判例(大阪家庭裁判所平成19年2月8日審判)でも、1日あたり8,000円、その3年分876万円が寄与分として認められたケースがあります。
ただし、認められたとしても思っていたよりも少額になってしまうようですね。

「寄与分」は相続人にのみ適用される法律なので、相続人の妻や夫には「寄与分」を主張する権利がありません。ただし、これについては今後改善の見込みもあります。

「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」(平成28年6月)によると、
「被相続人に対し生前療養看護その他の労務の提供等を行い特別の寄与をした場合に、相続開始後、相続人に対して金銭支払請求を認めること」という方針で検討しているようです。
相続人でなくても相続できるということではなく、あくまで相続人から金銭を受け取るということですね。

確実に相続分を増やすには遺言が1番

介護した人が多く相続するには、はやり遺言が一番確実な方法です。
遺言がない場合には、相続人間の協議で「寄与分」などについて上手く説明して理解を得ましょう。

他の相続人の理解を得る為にも、日頃から被相続人とのお財布を分ける、被相続人の口座からお金を引き出す時には使途を記録する、領収書を保存しておく、どんな細かいことでもできればメモしておくのがいいでしょう。
介護日記をつけるのもいいですね。記録を見せながら話をすると、根拠のない主張とは思われにくく、納得しやすいものです。

残された家族同士でトラブルになったりしないように、日頃から準備をしておきたいですね。

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